船舶輸送などの輸送におけるさまざまな輸送環境を実測し、
品質保持につなげていく。
船やトレーラーでの輸送は道路状況や天候の変化、波のうねりによって積み込まれた荷物の品質を損ねることがありましたが、実際、輸送中に荷物がどのような環境下にあるのかは把握できておらず、対策の取りようがありませんでした。これまでは船長やドライバーの経験と勘に委ねられていたのですが、「誰が操縦しても安全に輸送できるように改善しよう」という想いから、船会社に協力してもらい、輸送中に何が起こっているのかをデータ化し、すべて細かく調べることになりました。
まずは状況を知るためにどんなデータが必要なのかを話し合うところからスタート。揺れを測る加速度センサー、荷物の動きを目視できる暗視カメラ、ロープの弛みなどを調べる張力計、傾斜計、温湿度計など、そしてすべての数値のデータを記録する計測器ロガーは必須だということで案がまとまりました。すべての機器の選定を行い、準備は整ったものの、問題は設置。積荷を積み込みながら設置作業を並行して実施しなければならないため効率的な設置場所や数百メートルにも及ぶケーブルを効率的に通す方法をあらかじめ考える必要がありましたが、船は予定通りにこないことが多く、直前にならないとどの船に設置できるかわかりません。おおよそのあたりをつけてシミュレーションを行い、当日に挑むことになりました。
最初に設置したのは加速度センサー6台、暗視カメラ1台、張力計1台。電源のある部屋から荷物の部屋までは距離があるため、通気口などのルートを探してケーブルを通していきます。積み込みにおいても、不正輸入、輸出にならないよう、税関への届け出や機器の回収は、実際に技術室担当者がタイで徹夜で作業を行う等、設置〜輸送〜回収までかなりの苦労がありましたが、輸送環境の数値化に成功することができました。比較的穏やかな航海だったにも関わらず、予想以上に荷物が動いていたこともわかり、この数値は輸送方法や開発の際の基礎条件に大変役立っています。1秒に20データが取れるため分析が大変ですが、これまで経験則のみに頼っていたため数字という根拠を得ることができたのは大きな収穫でした。学会で発表し、優秀賞も獲得。今後はさらなる測定を継続し、データを蓄積して物流技術に反映させていきます。