輸送条件によって発生してしまう危険性がある線材の疵(きず)。
製品品質を守る技術とは。
重さ2t、直径1400mmの大きな線材コイル。海外へ輸送する際は船内の大きなスペースに線材コイルを何段にも積み上げていました。しかし、いざ現地につくと変形していたり、揺れによる疵(きず)がついていたりしていました。なんとか重量のある線材コイルを効率よく、安定して運べないものか−。それがパレット開発の出発点でした。
船の輸送で一般的なのはコンテナ。コンテナにうまく線材を積み込むことにより、揺れによる疵(きず)を軽減できるとともに小ロット輸送にも対応できる。その発想からまずはコンテナに効率的に積む方法を考えました。線材コイルの向きを工夫しながら、みんなで模型を使って案を出し合い、ベストな方法を考案。そしてそのために必要なのが線材を積むパレットでした。開発の条件となったのが、コンテナの中で動かないように固定できること、次に線材コイルを2段に積めること、そしてパレットの持ち帰りが必要なために大量に持ち帰れるように線材コイルを下ろしたあと折りたためる構造とするという3点。まずは、重量のある線材コイルを載せたパレットを簡単に積めるよう床との接触面に滑りやすい材質を採用し、そりのような形状に設計。フォークリフトで軽く押しただけでコンテナの中に滑って入るようにしました。
滑りやすいということは動きやすさにつながるため、コンテナの中でパレットを固定する必要がありました。隙間を埋める方法をいろいろと試したものの、古いコンテナだと若干へこんでいたりと形状にバラつきがあるため、最終的にパレットの端に調整が可能なネジ構造のつっぱり棒を仕込み、扉とパレットを固定。さらに、パレットと線材を縛る方法もさまざまな工夫を凝らし、ブックエンドのような仕切りも設置。商品である線材コイルにもしものことがあってはいけないので、実際に輸送する前に製鉄所内のインフラを利用し、起こりうる揺れや傾きを再現したテストを行い、その都度アイデアを出し合いながらようやく完成しました。初めて導入した際には技術室スタッフも一緒に中国へ。「現地でコンテナをあけた瞬間、無事に運ばれた製品を見たときの感動は忘れられません。」 その後、このアイデアは荷主さまにも評価され、特許を取得することができました。